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2008年01月15日

安来市が図書館に文献の一部削除を要請

島根県安来市が、島根県内の公立図書館に対し、文献の一部削除を要請していたことが明らかになった。

島根県安来市の「安来市誌」(1970年発行)と合併前の「伯太町史」(62年発行)に差別を助長する部分があったとして、安来市が県内の公立図書館に、この2冊を所蔵している場合、当該ページを切り取って市に送付するよう求めていたことが13日分かった。

図書館がこの要請に従い、ページを切り取るようなことがあってはならないが、安来市がこのような要請を行ったことは、理解できる(当然だが肯定しない)。図書館の役割や文献の意味を理解していないという意見もあるだろうが、一般の「理解」は、この程度のものでは無いかと思う。

時代とともに何が差別であるかという意識は変わるものである。現在の物差で過去をはかることはあってはならないが、ある程度の配慮を行う必要もあると思う。また、今回の要請は、今後、法的処置を受けることを回避する意味合いもあるのではないか。

閲覧制限ではなくページの削除を要請したのは、発行者が「安来市」であることも影響していると思う。「閲覧制限を要請すること」は、図書館に対する圧力であるが、「書籍の一部を削除して欲しいという要請」は、著者への圧力であり、即ち、自分自身(安来市)に対する圧力であると解していても不思議ではない。

現在は各図書館とも一般の閲覧はできないようにしている。

結局、閲覧制限という処置になった模様。妥当だと思う。

ところで、一般的な図書館は、貸出履歴を保存していないらしい(返却時に抹消)。ということは、都合の悪い部分を勝手に破り捨てても、誰が破り捨てたのか確かめる術は無いのではないか。文献の価値と人権を天秤にかけたとき、どちらが重くなるかは人それぞれだが、いかがだろうか。

さて、こういう記事があると、実際に「何」を削除しようとしたのか気になる。

検索結果

筑波大学附属図書館に存在することが判った為、実際に読んでみた。

安来市誌

館内でメモして帰ろうかと思ったのだが、思ったよりページ数がある。昼休みに来館したこともあり、読むには時間が足らず、借りることに。旧東京教育大学の蔵書も普通に貸出可能なのに驚いた。

くっついてる

糊のようなものでページが…。慎重に捲りながら読む。

市人権施策推進課によると、安来市誌は歴史について記述した複数のページで、被差別部落の地名を掲載。

報道を頼りに調べてみたところ、それらしい記述を P.210, 211 に見つけた。1862年の「鉢屋(非人)」の説明と村ごとの人数が記載されている。って、さすがに150年前の出来事を「差別助長」と言うわけ無いよね。今回の「削除要請ページ」は別のページであると思うが、力尽きた…。

このときにあたり発行した安来市誌は、これまでの郷土のあゆみを正しく理解し、先人の努力をたたえるとともに、その歴史を次代に伝える私たちの記録であると信じます。

安来市誌の序に書かれていた言葉。削除を要請した担当課は、この言葉を今一度見直して欲しい。また、今回の要請そのものも「歴史」の一部と記録して欲しいと思う。

【関連情報】
・郷土史、異例の削除要請 図書館に「差別助長」と - 東京新聞
 http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2008011301000203.html
・郷土史に差別表現 安来市と旧伯太町 図書館で閲覧制限に - 読売新聞
 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/shimane/news/20080113-OYT8T00386.htm

2008年01月15日 19:42 | Toshokan

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