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2007年09月09日

未踏ユースの Project Shizuku に注目

IPA 未踏事業に注目しなくなってから久しいが、現在進行中の案件の中に Project Shizuku という、筑波大生のプロジェクトがある。

このプロジェクトが目指すものは、利用者の貸出履歴情報や利用者が発信する情報を活用し、利用者に“他の利用者とのつながりを創る”機能を提供することでコミュニティを活性化する、利用者主体型の図書館情報システムです。

プロジェクト名からも分かるとおり、某アニメの雫を量産するためのシステムを開発するプロジェクトのようだ。このプロジェクトの成功度は、図書館を仲介して発生したカップル数によってはかることができるだろう。

という冗談は置いておいて…。

図書館は、利用者の行動履歴を大量に集めることが出来る施設である。代表的な行動履歴は、書籍の貸出履歴であろう。昔は、貸出カード(紙)で管理されていたため、他人の貸出履歴にアクセスすることも可能であった。そのおかげで、雫は聖司を手に入れることが出来たのである。

蔵書管理システムの高度化に伴い、貸出カードは消えつつある。高度化の背景もあるが、プライバシー権の普及も見逃せないところであろう。「貸出カードに名前が記載されると僕の趣味が他人にばれちゃう!」という問題である。このような方に「君に注目している人なんて居ないから(´Д`)ハァ…」と教えてあげても聞く耳は持ってくれない。

話がずれて来た。

現在は学校図書館を対象として開発を行っています。

この視点が面白い。やはり憶測であるが、書き続ける。

Project Shizuku の目的は、某 EC サイトのように「○○を読んでいる人は△△も読んでいます」という仕組みを図書館の蔵書管理システムに組み込むものだと思っていた。しかし、この「仕組み」を組み込むことと「図書カード」復活になんら繋がりを見出すことが出来なかったのだ。すなわち、この考え方は間違いである可能性が高い。

本当に雫を量産するシステムに思えてきた。もちろん、カップルを量産するという意味ではなく、図書館を通じて「友人を見つける」「話題のきっかけ」を見つけるというわけである。そういう意味であれば、学校図書館を対象とするのは、非常に良いと思う。

学校図書館を対象とせずに、広くインターネットサービスとして開発することも可能だろう。僕であれば、そういう構成にするのは間違いない。しかし、利用者が広範囲に及ぶと、最後のカップルになる、じゃなかった、友人になるという行動に結びつきにくいんじゃないかと思うわけ。その点、学校という枠であれば、程よいと思う。さらに、教育的処置が期待できるため、ある程度、プライバシーに対する寛容性を期待することが出来る。もちろん、メディアリテラシ教育とセットになるが。

「○○さんの友達になれそうな人は△△さんです」というシステムではないだろう。単純に「図書カード」を復活させるものと思われる。その「単純」が非常に難しいのだろうが。前記のような計算された統計的な情報は、マッシュアップの役目だろうね。

UI がシステムの肝になりそうなので、そういう部分を早めに触れると良いと思う。

ふう。

言いたいことは、このプロジェクトに注目しているということ。大絶賛して持ち上げようと思ったのだが、良い文章にまとまらなかった(かなりの散文)。もう少し、図書館や図書館情報学、ヒューマンコミュニケーションについて考える事にしよう。

僕には、IT の普及によって失われたものを IT によって復活させるという視点が欠けていた。便利になればどこかが不便になっている。便利さには保存則があるのだろう。事柄の裏側を考えるように、気を付ける。

【関連情報】
・Project Shizuku ~次世代図書館情報システム~
 http://www.shizuku.ac/

2007年09月09日 19:57 | University

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コメント

常川 様
山形市立図書館の司書の古瀬です。
3月9日のJLAでのプレゼン、お疲れ様でした。

 懇親会でのライプニッツの件、参考までにお知らせ致します。
①観念(イメージ)=能力(想像力)を説いています。「…観念とは何か」(ライプニッツ著作集第8巻所収)工作舎
②何と!史上初「同値関係」を説いています。合同・相似・同相・ホモトピー同値・接触角の点と角(点とベクトル?かと…)…。
 数学の対称性・不変量、力学の変換群・運動表現・保存則・ゲージ原理、論理学の項・内包・外延、に関わる大前提です。
「数学の形而上学的基礎」(ライプニッツ著作集第2巻所収)工作舎
核心部分は、小部です。気紛れにでも、ぜひご一読の程を…。
 萌芽的ながら、記号論理学・微積分・位相幾何学・関数・座標・行列式・ベクトル解析・微分形式・変分法…、線形代数の世界を拓きましたが、窓のないモナドの「実体的紐帯」は、どうも色物(非線形の可積分系?男女の仲?)でしょう。
 フッサール、ゲーデル、ヘルマン・ワイル、ハイデッカー…彼等を瞠目させただけのことはあります。
 山形県立図書館の元プログラマー氏の作った「マイ・リスト」は、「SHIZUKU」の元ネタであることは変わりませんが、「巨人の肩に乗った小人」ではなく、巨人です。レベルが違います。
 蛇足ながら、エッチゲームの「雫(SHIZUKU)」は、純情オヤヂも大好きです。

投稿者 古瀬利明 : 2009年03月17日 16:28

古瀬 様

Project Shizuku開発メンバーの常川です。JLAでは出席いただきありがとうございました。

ご丁寧にライプニッツについてご紹介いただき感謝いたします。

ただ、こちらは私のブログでは無いので、下記のブログにコメントしていただけるか、お渡しした名刺に印刷されているメールアドレスで連絡をいただけないでしょうか。

「図書館情報学を学ぶ」
http://d.hatena.ne.jp/kunimiya/

ブログ管理人のceekz様、ご迷惑をおかけしました。

投稿者 常川真央 : 2009年03月17日 19:37