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2007年12月15日

「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪

「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪

友人の勧めもあり、購入した。

近年、アジア界隈では歴史認識が問題となっている。その中心は、慰安婦の問題であろう。政府は既に軍の関与を認め謝罪を行い、政府と国民により「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」が作られ、被害者への償いを行っている。本書は、その基金の当事者による、失敗と達成の記録であり、現在の慰安婦問題の原点を探る。

著者は、アジア女性基金の呼びかけ人であり、「何らかの手段で慰安婦の方々に補償を行わなければならない」という立場であるが、それに同意できなくとも、本書は読む価値がある。また、慰安婦に興味が無くても読む価値があると断言できる。

メディア・NGO・政府の功罪

副題の通り、慰安婦の問題を周囲の関わりの仕方から解いており、その功罪を示している。非常に示唆の多い書籍である。歴史認識としての慰安婦には触れていないため、本当に「慰安婦」が存在したか否かなどは、焦点にならない。

日本における「慰安婦」問題は、「韓国の慰安婦問題」に終始したと言っても過言ではなかった。

現在もその状況が続いているように思う。他国で実施されたアジア女性基金の活動は、あまり表に出ていないだろう。慰安婦問題は、日本軍が存在した場所全てで存在すると考えるのが妥当であり、韓国だけの問題ではない。

看護婦、家政婦・賄い婦、工場労働者として募集され、現地に着いてみたら「慰安婦」として「性的奉仕」を強制され、長期間自由が拘束される状態におかれたというケースである。

戦時中の慰安婦問題の実態は、引用の通りでほぼ共通の認識が確立しているらしい。強制されたという事実は、加害者と被害者の認識では、大きな隔たりがあるものだと思われる。これは、現在のセクシャルハラスメントの問題を取り上げる中でも発生している。

法の解釈は時代とともに変わりうる。二〇世紀を通じて、被害者個人の請求権を認めるべきだという解釈が学説上徐々にふえてきたことはたしかである。

慰安婦の個人補償は、サンフランシスコ平和条約や二国間協定で解決されているという件で。法の解釈が時代とともに変わるとしても、現在の解釈で、過去を裁くことがあってはならないと思う。「法の不遡及」は、様々な分野で認められるべきだろう。

日本人「慰安婦」がもっとも多かったという説さえあるなかで、日本では一人も名乗り出る元「慰安婦」はおらず、基金による償いもなされなかった。

他国に対する日本の戦争犯罪を追及する団体は別であるが、戦時中の慰安婦を問題にする団体(特に女性の人権を問題とする団体)は、この事実をどうとられているのだろう。被害者を代弁する者は居るのだろうか。その団体の存在を、メディアが無視しているだけなのだろうか。

本書では、支援団体(NGO, 市民団体)が「被害者」の声を消してしまうということが何度も挙げられている。元慰安婦は、既に高齢であり、国家補償を求めるという「非現実」な活動に付き合うあまり、何の補償もされることなく亡くなる可能性が高い。特に韓国では、顕著となってきているようだ。

本書は、誰にでもお勧めする。補償問題の賛否を問わず、また、慰安婦に興味がある無しにも可かわらずお勧めする。何らかの活動行う中で発生する問題に対する重要な示唆が沢山含まれている。是非、読んで欲しいと思う。

ページ数: 248
読書時間: 2:50 (1.46 p/min)

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・「慰安婦」問題とは何だったのか―メディア・NGO・政府の功罪 - だめ大学生日記2.0
 http://d.hatena.ne.jp/antaka/20071112/1194871379
・デジタル記念館「慰安婦問題とアジア女性基金」
 http://www.awf.or.jp/

2007年12月15日 23:43 | Books

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