« はてなが京都に移転する件について | メイン | やることがあるんだけど »

2008年02月17日

AO/AC 入試の廃止はアドミッションポリシーと実施コストが理由

先日、九州大学法学部が AO 入試を廃止するという報道が大々的になされました。その煽りを受けて、既に決定事項であった、筑波大学国際総合学類の AC 入試廃止も同列に語られているようです。筑波大学の話題も出てきたので、取り上げてみますかね。

九州大学法学部と筑波大学国際総合学類の廃止ですが、理由が異なります。

試験別に入学後の成績を比較したところ、AO入試で入学した学生の成績がほかよりも低い傾向にあったという。センター試験を課す学部では目立った差がなく、基礎学力の不足が原因と判断、廃止を決めた。

九州大学は、入学後の成績が悪いことを理由に廃止しています。

筑波大アドミッションセンターは廃止の理由を、「きめ細かく検討して時間をかける割に、他の入試で入った学生と目立った違いがなかったため」とする。

対して、筑波大学は、目立った違い無かったことを廃止の理由にしています。

九州大学は、何を目的に AO 入試を実施していたのでしょうか。筑波大学は、他の学生よりも「目立つ」学生が欲しかったように思われますが、九州大学の求める学生像は、記事から分かりません。

AO選抜(総合評価方式)では,主要科目の基礎学力を前提として,社会的関心,柔軟な理解力,的確な分析能力と問題発見能力,論理的で説得的な表現能力などを評価したいと思います。

九州大学法学部のアドミッションポリシーによれば、基礎学力を前提としているため、今回、その「基礎学力」が担保とされていないため、廃止に至ったと考えられます。即ち、基礎学力が無いことを理由にするというよりも、アドミッションポリシーの遂行が難しくて廃止かと。

AO 入試で基礎学力云々は無意味と思っていますが、アドミッションポリシーで定めているのでしたら仕方が無いですね…。

独創性と問題発見・解決能力とともに、国際的な視野とコミュニケーション能力を総合的に評価する。

筑波大学国際総合学類の AC 入試のアドミッションポリシーは、上記の通り。「国際的な視野とコミュニケーション能力」は他の選抜方法でも求められており、「独創性と問題発見・解決能力」が AC 入試でのみ求められているアドミッションポリシーです。

今回、この「独創性と問題発見・解決能力」が備わっていなかったことが廃止の理由となったかは明らかではありません。理由は「目立った違い」が無いことであり、他の選抜方法の者も「独創性と問題発見・解決能力」を備えていた可能性があるからです。

結局、実施コストが廃止の理由でしょう。自己推薦資料を段ボール箱に入れて送る受験生が多々いる(都市伝説化されそうですが事実)選抜方法ですから、書類に目を通すだけでも大変ですし、選抜基準が明確ではありませんから(一定ではあるらしい)、試験官に対する重圧は計り知れないものがあると思います。

ということで、朝日新聞は、最近の「学力低下」に悪乗りしすぎです。基礎学力や成績は、廃止の本筋ではないでしょう。アドミッションポリシーの有効性や、一部大学での AO 入試形骸化(単なる学生集めに利用)などに踏み込んで欲しいですね。

余談ですが、筑波大学が AC 入試というのは、海外の AO 入試と区別するためです(ソース失念)。アドミッション・オフィス(AO)に対しアドミッション・センター(AC)ですから、海外ほど入試実務の権限が委託されていないという皮肉もありそうですが。

【関連情報】
・asahi.com:AO入試、廃止の動き 九大・筑波大など 「成績低い」 - 暮らし
 http://www.asahi.com/life/update/0214/SEB200802140011.html
・法学部 - アドミッションポリシー - 九州大学
 http://www.kyushu-u.ac.jp/entrance/policy/lawap.php
・筑波大学 大学案内2008
 http://www4.d-pam.com/fileRoot/fp/4/0/400130/DigitalAlbumRoot/070703150439/default1.html
・大学プロデューサーズ・ノート 【アーカイブス】日本の大学は、AO入試を勘違いしている?
 http://blog.livedoor.jp/shiki01/archives/50021771.html

2008年02月17日 22:40 | News

トラックバック

コメント

うーん、九大についてだけど。
「主要科目の基礎学力を前提として」というのは「自らが掲げる」前提=AO試験でのフィルタリング条件だよね。

それが満たされなかった=「入学後の成績を比較…AO入試で入学した学生の成績がほかよりも低い傾向」ということは、自分がやってる試験で上記前提を学生が持っているか否か「自分が」判断できなかった、という、「俺の目はフシアナでした」って話なんじゃないの?

読み違えてるかも…。

投稿者 斎藤ただし : 2008年02月19日 03:12

>> 斎藤ただし さん
その通りだと思いますよ。ただ、新聞社の悪乗りもあって、学生が悪いように取れるような報道になるんですけどね。

筑波大だと、選考基準が一定であることと、志願者状況次第で、定員を下回ることも上回ることもあることを公言していますので(ポリシーに従い真面目に運用すると公言)、廃止の際は、コストしか理由にできないという…。

投稿者 ceekz : 2008年02月19日 13:06

知ってるだろうけど、生物学類はセンター結果の提出も求めるよね>AC。
そういう方向に行く学類もあるのかも。

# Nぼりくんによると、うちの学類は増員方針…てほんとか??

投稿者 斎藤ただし : 2008年02月19日 20:26

>> 斎藤ただし さん
「生物資源に関連する基礎学力と学習意欲」を求めていますから、それを評価する方法として妥当でしょう(やらない方が変かも)。筑波の AC で基礎学力を求めるのは、生物資源だけですね。
また、全 AC にセンター試験提出を必須にし、入学前学習や入学後のフォローに活用するのもアリなんじゃないかと思います。現在でもある程度学力で足きりしている感がありますが、フォロー強化でより柔軟な選抜が出来る可能性があるのでは。

個人的には、国立大学の AO/AC は、基礎学力もある程度求められていると感じています。その大学に入るだけの基礎学力が無くても、偏差値ランクが少し下である他の国立大学に入るだけの学力を持っている人たちばかりでは。

投稿者 ceekz : 2008年02月19日 22:41

筑波とHarvardを同時に受験してみてはどうか、と思いますね。

投稿者 mantis : 2009年08月30日 09:21