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2007年12月28日

公立図書館運営費は医療費にまわそう!

素人が図書館に喧嘩を売るエントリーの第二段です。著者は、図書館の素人です。しかし、著者はサーチャーを支援するシステムを造りたいと思っています。図書館の司書は、サーチャーの役目を負っているものだと思っていましたが、どうも「単なる本好き」の集団な気がしてきたところから、現在の図書館に疑問を感じるようになりました。そこで…。

「後で考える」メソッドを利用して、後回しにしていました。

min2-fly 氏にお返事を頂きましたが、心の霧は晴れませんでした。また、関連するエントリーが色々なところで書かれましたが、やはり霧が晴れません。もちろん、僕の性格に起因するところもありますが…。

無償の根拠として「知る権利は大事なものだから誰もがアクセスできるようにするべき」と考えていらっしゃる人が多いようです。素晴らしい!でも、生存権の方が優先されて欲しいので、図書館の運営費用は、医療費に全額移行しては如何でしょうか?

医療費に全額移行するというのは極端ですが、昔から「無償」で行われていることが、果たして「有償」「無償」論を経ての結果なのか興味があります。即ち、無償で行うことを前提している、無償で行うということで思考停止している状態では無いでしょうか。

文化以前に生きていくために(この場合は「最低限の生活」を送るためではなく、一定レベル以上の教育を必要とする職業に就いたり、生活上直面する場面で適切な選択ができるだけの情報を得るために)必要な情報を入手するところとして捉えられているからこそ図書館は無料なんだろう*3。

これは、アメリカの例のようですが、教育の機会が保障され、また、教育制度が整っている日本では、少し無理のある議論のような気がします。薄々感じていたのですが、「(日本の)図書館」と「(諸外国の)ライブラリー」は大きく概念が異なるのではないでしょうか。図書館の現場の方々は「図書館」を語り、研究者や図書館情報学を学ぶ方々は「ライブラリー」を語っている雰囲気があります。

「ライブラリー」が「無償」だから「図書館」も「無償」にしたよ!というのであれば、そろそろ再考しても良いのでは無いでしょうか。日本と諸外国では、文化や状況、関連事業の整備具合が大きく異なっていると思います。

「有償論」を掲げた一番の理由は、図書館の評価方法がどのようになっているのだろう…という疑問からです。また、評価方法があるにしても、運営のモチベーションとして有意義なものかどうかも気になります。それらを解決する一手段として「金」を挙げてみました。

また、筑波大学特有の事例ですが、大学図書館には、多くの机や個室があります。しかし、利用率が高いのは「試験前」だけであり、それ以外の利用率は、極めて低いです。空間が非常にもったいない!一部(清掃費?)を利用者負担にして、快適な環境(利用の自由度を上げる)を提供することが出来れば、利用者が増え、空間の無駄が無くなるのではないかと考えています。

博物館は図書館と違ってオリジナルかどうかが重要です。学芸員の方は一点ものの重要資料を各方面からお金を出して借りてくるわけです。

図書館と博物館の違いとしては、付加サービスの違いが挙げられていました。非常に興味深いです。博物館も「原則無償」であるにもかかわらず、付加サービスにより「有償」を実現していますが、図書館には、そのような取り組みが見られません。図書館は「保存」という重要な任務を担っていると主張するにも関わらず、歴史的に重要な書物は、博物館に奪われている(資料から史料に)のでしょうか。

図書館といえば、なぜか「公文書館」とセットで語られることが多いようです。貴重な書籍や公文書を保存するための「公文書館」は、明確に独立するべきだと思っています。もうね、図書館の運営費を奪い取ってでも独立すべき。制度整備が全くといって良いほどなされていないようですが、制度整備に向けた動きはあるのでしょうか。

あるいは比較的最近できたところで有名なのはアカデミーヒルズ六本木ライブラリー。

アカデミーヒルズ六本木ライブラリーのアイデンティティ(小林麻実)」という論文を紹介していただきました(2006 情報の科学と技術 56巻2号)。読んでみたいと思います。

結局、図書館の役目は何なのでしょう。図書館が無償で運営されている理由よりも、図書館が運営されている理由を考えるのが先ですね。「知る権利」や「本を読めること」が重要なのであれば、司書の皆さんは、書籍をスキャナに当てる日々を送っていそうですしね(書籍の電子化)。

根本に「図書館運営の怠慢」を感じていることが、現在の思考の原点です。素晴らしい理念を持っており、共感を得られるのであれば、例えば、各都道府県立図書館くらいは、国会図書館と同様に、出版社から無償で献本を受けられる制度に出来たのではないか。そういう方向に運動したのだろうか。

筑波大学の同窓会である茗渓会は、理想の学校を目指し「茗渓学園」を設立しました。旧図書館情報大学の同窓会である橘会(茗渓会の支部)が「橘図書館」を設立する日はやってくるのでしょうか。

と。妄想混じりに考えていることを色々吐き出しました。数日すれば、吐き出したら無い妄想が出てきそうですが…。筑波図書館系忘年会・新年会が開催されるのでしたら、ぜひ同席したいと思います。

読み直すと、疑問系ばかりだ。フルボッコされる予感。

【関連記事】
表面的な注意では気づかないこと (2007年12月05日)

【関連情報】
・[図書館]「なんで図書館は有償じゃないん?」とか「有償じゃないと利用者増やすメリットないん?」とか
 http://d.hatena.ne.jp/min2-fly/20071216/1197790117

2007年12月28日 21:35 | Toshokan

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このリストは、次のエントリーを参照しています: 公立図書館運営費は医療費にまわそう!:

» [図書館][戯言]それは、図書館があった方が安くつくからだよ from かたつむりは電子図書館の夢をみるか
以前、図書館の有償/無償の話のときに取り上げさせていただいたCeekz Logsさんのところで、このような記事がアップされていました。 公立図書館運営費は医療... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年01月04日 06:27

» 図書館不要論について from 日々記―へっぽこライブラリアンの日常―
 以下の2件のブログエントリを読ませていただいて考えた所を、こんな場末のブログで [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年01月06日 18:57

» 天秤には掛けられないが、お財布はひとつ。 from 丸山高弘の日々是電網 The First.
以前、「公の施設...がたどる未来」を書いている時にも感じていたが、自治体の財政状況は、僕たちが認識している以上に、深刻なのかもしれない。 年末年始、大阪で立... [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年01月07日 03:06

コメント

図書館の役割を語るときに、公共の図書館と大学の図書館を同列で語るのは違うと思うよ。
前者は、エントリの中で引用されているように全ての人に対して、開かれているものだけれど
例として挙げられている、筑波大学の図書館は大学という教育機関の教育・研究を補助するためにあるから。
だから、司書の役割もサーチャー云々も論点がずれてしまっている気がする。

所詮、今は酔っ払いの頭なので、今度会ったときにでも話しませう。

投稿者 ちこ : 2007年12月30日 04:51

>> ちこ さん
同列に語るのは危ういですが、公立図書館(公共の図書館)の役割は大学図書館の役割を包括しませんか。
大学図書館が、公立図書館が担う役割を超えた「何か」を担わなければならないとすれば、その内容に興味があります。

覚えていたら、次に会う機会にでも教えてください。

投稿者 ceekz : 2007年12月30日 07:28

「公立図書館運営費は医療費にまわそう!」は、なかなかよい問題提起だと思います。
もうちょっと広く捉えて、公立の社会教育施設の運営費を見直し、福祉や医療費に回そう...という提言はどうでしょうか。

一般的に、公立の社会教育機関(博物館や美術館、図書館、公民館)はそもそもそ、市場性がないから公金負担で...と言われてきました。が、大阪でおきた「救急搬送のたらい回し事件」を考えると、そうも言ってられません。住民の生命をギリギリのところで守れるのは行政です。
背に腹は変えられません。
図書館もそろそろ、親から自立する子供のように、自治体から自立することを考えなければならない時代なのかもしれない...と、そう思うのです。

投稿者 まる3 : 2008年01月07日 01:32

>> まる3 さん
本来の立ち位置は、某野党の主張に近く「公共事業の財源を教育・医療・福祉に」です。また、高齢者医療費よりも教育費(特に未成年を対象とするもの)を重視するべきと考えています。

図書館は社会・生涯教育施設としては最も身近なところにあり、より充実した施設になるのが望ましいと考えています。しかし、世間の支流は「小さな政府」となりつつあり、公金負担が減らされていくのはある種仕方の無いことだと思います。その上で、公金負担を減らさないためにどのような取り組みがあるのか(図書館の独自性・有用性)、また、公金負担が減ったときに、どのように独立していくのか(運営財源の確保・運営の効率化)を、図書館界隈から情報収集していました。いわゆるツンデレ。

投稿者 ceekz : 2008年01月13日 00:58