« 裁判官の爆笑お言葉集 | メイン | 食事に行く場所が決まらない »

2008年03月07日

論文の複製は図書館で行うべきとか

金曜日は、図書館の話題をひっそりと。

2週間前と同様、著作権法と図書館(+ 大学)の関係を考えてみたいと思います。

「著作権は混迷」「ダメと言ってもネットは止まらない」──東大中山教授 - ITmedia News

デジタルコンテンツ協会のシンポジウムでの中山信弘教授(東京大学)の講演を題材にしたいと思います。題材という言い方は不適切ですが、面白い話題に触れられていましたので。

例えば中山教授が大学の研究室で他人の論文をコピーする行為も、「私的使用の範囲を超えているから」著作権侵害に当たると話す。

実際にどのように語られたのか定かではないですが、恐らく「研究室に必要な論文を複製する」という意味だったのではないかと思います。純粋に「研究室」という場所で複製するだけであれば、私的使用の範囲を超えないと思います(私的使用の複製が複製を行う場所で制限されるのであればご指摘下さい)。

「研究室に必要な論文を複製する」という解釈も難しいのですが、論文の複製を必要とする者が居るのであれば、その複製は著作権法第三十一条(図書館等における複製)に基づき、図書館で複写を行えばよいと思います。

教授 A が論文 B を適切な方法で入手しているという条件で、学生 C が論文 B を必要としている場合、教授 A が論文 B を複製して、学生 C に渡すことは、著作権法上認められていません(中山教授の講演でもこのシーンを想定しているのだと思います)。ただし、論文 B が図書館に存在するのであれば、学生 C は図書館で複写すれば、著作権法上認められる複製になります(研究目的であれば)。

この場合、図書館に論文 B が存在する必要があり(無い場合でも他図書館から取り寄せてもらえるが)、その点を解決する必要があります。多くの大学では、各研究科(各研究室)の図書購入費を図書館に移し、図書館経由で購入することで解決しているのではないかと思います(研究室が半永久的に借りられる制度もあったり)。

あれ。学生 C が、教授 A から論文 B を借りて、自分自身で複製すれば「私的使用」範疇じゃないかな…。ああ。ダメだ。輪講とかで使えないはず。

ここからは、関連する問題提起になります。主要学説を探せば答が見つかりそうですが。

第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。... (以下略) ...

著作権法第三十五条では、学校での複製に関する規定が定められています。条文の「学校」は、学校教育法に定められている学校であり、「その他の教育機関」とは、職業能力開発促進法で定められた各種職業訓練学校などが相当すると思います(図書館や博物館も含むかも)。

ただ、学校であれば、自由に複製して良いという規定ではありません。「授業の過程における使用に供することを目的」としている必要があります。さて、その「授業」の範囲は何なのでしょうか?

研究室が行っている「輪講」「セミナー」は、第三十五条の「授業」と見なせますか。見なせない場合は、なぜなのでしょうか。また、大学教育における「研究室配属」を「授業」とみなす事は、出来ませんか?

中山教授が、研究室の事例を挙げて著作権侵害に相当すると話されていますが、根拠は第三十条(私的使用のための複製)であり、他の条文に触れられていません。他の条文を根拠に研究室内の複製は合法と見なせるのでしょうか。

問題提起はここまで。また、先ほどの記事に戻ります。

例えば検索エンジンのキャッシュの扱い。日本の著作権法では現状、キャッシュは複製とみなされるため、著作者に無断でキャッシュを作成・蓄積する検索エンジンサーバは「著作権侵害の可能性が高い」。

この「例」を挙げたのは、中山教授ですか?記者(岡田氏)ですか?

ヤフーやグーグルなどは、検索サーバを国外に置いている。

検索サーバを「国外」に置けば、日本の著作権法が適用されないように受け取れますが、日本では属人主義が採用されており、検索サーバを「国外」に置いても運営が国内でなされている限りは、日本の著作権法が適用されると思います。

ヤフーやグーグルの検索サーバが国外にあるのは、運用体制、システム構成上、コストの問題で、著作権法回避という意味は無いと思います。まぁ。一文目と二文目は並べられているだけで、関連付けはされていないので、僕のミスリードかもしれませんが。

本日のまとめ。

・論文の複製は図書館の複写制度を利用する
・著作権法第三十五条の「授業」の範囲はどこまで?
・日本の著作権法は属人主義が採用されています

---

信濃毎日新聞[信毎web] 富士見町図書館が個人貸出数10年連続日本一

協会のまとめによると、同館の06年度の総貸し出し数は約31万2000点で、人口1人当たりでは20・0点だった。

この数字は、筑波大学附属図書館における学生1人あたりの貸出数を少し上回ります。

同館は、ソファやこたつを置いてくつろげる環境をつくったり、夜間開館で利便性を高めたりしており、「今まで携わってきた職員たちがアイデアを出し合った成果」としている。

貸出数以外の利用指標も知りたいですね。実のところ、貸出数よりも館内で読んだ冊数の方が大事だと思うのです。欲しい書籍が見つからずに斜め読みし続けているというネガティブなものもありますが、館内で読書するという行動は、館内の快適な読書スペースが無ければできません。貸出数の指標化は、館内サービスを疎かにするのではないかという事もあり、あまり良いイメージを持っていません。

asahi.com:全国初の公設書店「わかば」が閉店へ-マイタウン大分

開店後の数年間は、図書館にも本を納めるなどして、年間売り上げが900万円以上もあったという。しかし、読者の本離れや、旧中津市との合併後は図書館への納入もなくなって売り上げが減少。

図書館に対する販売と、一般販売の売上比較が知りたいですね。いい加減、何でもかんでも「本離れ」に原因を求めるのは止めた方が良いと思います。新聞記者の勝手な想像だと思いますが。

京都新聞電子版 - 滋賀県立図書館、月火の連休へ 来月から、職員の勤務日程考慮
JLAメールマガジン 第385号

滋賀県立図書館は来月から新たに毎週火曜日を休館日とし月、火曜日連休にすることを決めた。

開館日を減らすと、無料貸本屋化が進むような。

開館日が多ければ多いほど、館内サービスを受ける事が出来ますが、少なければ少ないほど、館内サービスを受けることは出来ません。従って、書籍を借りることしか出来なくなり、無料貸本屋化が進むと考えています。

図書館にあって本屋に無いものが「館内サービス」であると考えているので(従って蔵書の充実具合は館内サービスには含まない)、元々館内サービスが無いのであれば、既に無料貸本屋であり、無料貸本屋化では無いですが :p

滋賀県立図書館が休館日を増やして、資料費を確保

現実は、資料費確保のようですね。あれ?新しい書籍を確保する(借りたがる本を増やす)ために館内サービスを削減するのであれば、ますます「無料貸本屋」になるなぁ。

斐川町立図書館:財政難、募金1円も集まらず 図書購入費「みんなで育てて」 /島根 - 毎日jp(毎日新聞)

財政難に苦しむ斐川町が、町民から募金を呼びかけ斐川町立図書館の図書購入費にあてるため「町立図書館図書購入基金条例」を昨年12月に制定した。だが、町の期待と裏腹に、募金が全く集まっていない。

「図書館は無料だから使ってるのであって、金なんか払いたくねーよ、という住民が多いのかな。」と考えたのですが、そもそもニュース記事の内容がよく判らない。

募金箱が図書館の玄関に設置されたのは、2月下旬であり、その募金箱には1円も集まっていない、という事実は理解。記事をよく読むと、他に募金箱が設置してから、遅れて図書館にも設置されたように受け取れます。この受け取り方は正しいのか、また、他の募金箱ではどれだけ集まっているのだろうか。

図書購入費に予算を投入できないのであれば、募金よりも、読み終わった書籍の寄贈を募る方が良いのではないかな。寄贈がどのように行われるかにもよりますが、書籍に寄贈者の名前を入れられるのであれば、色の付かないお金より、自尊心も満足させれそうだけど。

Flickr、有料アカウント1万人分を非営利団体に提供:ニュース - CNET Japan
丸山高弘の日々是電網 The First. : 図書館+Flickr+地域コンテンツ

Flickrは非営利の技術支援団体TechSoupと提携して、1年間有効のFlickr Proアカウント(通常は1アカウントあたり年額約25ドル)1万人分を非営利団体と公共図書館に寄付し、写真を無制限にFlickrにアップロードできるようにする。

面白い試みですが、日本の図書館で Flickr を生かせるところはどれだけあるのだろうか。また、この提供の事実を知っている日本の図書館の数は!?

指定管理者精度を導入している 山中湖情報創造館 で Flickr を導入する動きがあるようなので、注目したいと思います。

「ゆかいな図書館」に2000冊寄贈続々 和歌山・橋本駅 - MSN産経ニュース

同図書館は平成10年9月に駅の待合室を改修して開館された。乗降客が自由に閲覧、持ち帰ることができるシステムで、市民や全国から寄贈された図書でまかなっている。

自由に閲覧などが出来る点もそうですが、全ての書籍を寄贈でまかなっている点を高く評価したいです。実家の最寄り駅(同じ和歌山県)でも同様の事を行っていますが、蔵書数はそれほど多くないです。

世話人の阪口繁昭さんは「読み終えれば返本をお願いしたいが、持ち出しなど自由なシステムは続けたい。そのためには補充本を増やしたい」と話している。

当初の理念を貫く姿勢が素晴らしいです。この姿勢が貫けるのも、全ての蔵書を寄贈でまかなっているからかな。公金に左右されないし、また、事業を通じて寄贈を行ってくれる方々が大勢居ることを知ったのでは。

---

自分の本棚の整理をしようと思いましたが、投げ出しました。ウェブ本棚でシミュレーションが必要ですね…。本棚整理のコツとかありませんか?

【関連記事】
図書館における著作権法第三十条と第三十一条とか (2008年02月22日)

【関連情報】
・著作権法
 http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html

2008年03月07日 23:43 | Toshokan

トラックバック

このリストは、次のエントリーを参照しています: 論文の複製は図書館で行うべきとか:

» Q6:公立図書館で職員が減らされているのですが… from ピリ辛著作権相談室
Q:とある地方都市の公立図書館の職員をやっております。お役所の中ではそれほどスポ [続きを読む]

トラックバック時刻: 2008年08月16日 01:13

コメント