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2007年12月30日

誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実

誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実

映画 Sicko の影響もあり、購入した。

近年、救急医療における患者のたらいまわしなど、医療崩壊が叫ばれるようになってきた。病院が悪者にされがちだが、原因は何だろうか。また、現在の医療現場はどのようになっているのだろうか。現役勤務医が医療現場の実態と医療崩壊の真実を明らかにする。

病院から医師が逃げ出し、地域から病院が姿を消す!このツケは我々患者にまわってくる!
なぜ、日本の医療はここまで追い込まれてしまったのか。現役勤務医が厚労省のウソと医療の危機的状況を鋭く斬る!

現役勤務医の愚痴に近い内容が書かれている。ただ、医師が医療現場を語ることが少なく(語ったとしてもほとんど報道されない)、医療現場を知るためには、本書をはずせないと思う。

医療保険は緊急を要する急性期医療のみを扱い、長期入院のための医療病床は介護保険にまわすことで、医療費の大幅な削減を図ろうという魂胆だ。

現在の「医療」は、様々な役割を担いすぎだと思う。介護保険制度が確立するならば、それぞれのプロフェッショナルが対応することにより、分業は良い方向だと思う。日本独特かもしれないが、全てを一箇所で満たすことを期待しすぎているように思える。同様の問題は、主治医制度にも現れている。

一般社会では、技術や機器が「進歩」すると、人手が省けると認識されている。しかし、近年の目覚しい医療の進歩は、逆に、勤務医の仕事量を劇的に増やした。

「進歩」により効率が上がるのは、今までの業務を「効率的」に行えるようになる場合だけである。医療の「進歩」は、効率よりも「選択肢」の増加に寄与しているだろう。選択肢が増えるということは、全体の業務量が増え、結果的に効率が上がらないばかりか、下がることも十分考えられる。

早い話、昔は諦めざるを得なかった症例も、助かる可能性が出てきたが故に、作業量が増加するということである。進歩の皮肉だろう。

一般の勤務医は、生涯賃金も、大手企業のサラリーマンより安いといわれている。

これは意外であった。勤務医の「年収」は若干高めであるが、移動が多いため、退職金の積み立てがほとんどないことに起因しているようだ。ただ、開業医は、少し事情が違うようである。

さて、誰が日本の医療を殺すのだろうか。筆者の主張では、政府ということになる。根拠は諸外国との比較や予算比率を基にしているが、予算額が適切かどうかは、判らなかった(各国で事情が異なるため)。ただ、医師の数が足りていないのは、連日の報道を見ていると明らかであろう。

学校再発見!―子どもの生活の場をつくる

教育現場の実態も知りたい方にお勧め。同様に「愚痴」が書かれている。

ということで、医療現場を知りたい方にお勧め。現役勤務医が執筆しているためある程度バイアスがかかっているが、報道されていない現実を知ることが出来る。

ページ数: 220
読書時間: 1:57 (1.88 p/min)

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【関連情報】
・日経メディカル ブログ 本田宏の「勤務医よ、闘え!」
 http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/blog/honda/

2007年12月30日 08:51 | Books

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トラックバック時刻: 2008年03月31日 10:50

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トラックバック時刻: 2008年10月23日 17:58

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トラックバック時刻: 2008年11月21日 13:12

コメント

医師数が足りなくなったのは「医師が余ると収入が低下する」ということで医師ら自身が医学部定員を大幅削減した結果ですよ。

http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/1127/703

投稿者 M : 2007年12月31日 09:18